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その両目に飛び込んでくるのは、七面鳥の丸焼き、山盛りのスライスパンに、小分けされた湯気立つビーフシチュー。
ヒラメのムニエルにアボガドサラダ、更にはワインの赤みが食卓に華を添えている。
それを当然のように食す怪人たち。
食べ方は卑しく、肉の切れはしや魚の身が床を盛大に汚していく。
末端は床に広がる残飯程度のものすら口に出来ないにも関わらず、この豪奢ぶりである。
ーー働かないばかりか、訓練すら遠退いている連中が、なぜだ。
そう思った瞬間には足が動いていた。
椎の実を殻ごとかみ砕き、トレイはその場で放り投げた。
怪人専用スペースには古株ばかりが並ぶ。
長テーブルには純白のクロスがかけられ、それを汚す者の数は十を超え、最奥にはコウモリに似た男が座っていた。
執行部長のユダンである。
彼はフォグルの姿に気付くと、ワイングラスを軽くあげることで挨拶した。
「やぁ、たしか君は候補生の……」
「霧の魔人フォグルです」
「そうだった。名前を失念して済まないね。一定レベルに到達していない者の名は覚えにくくて仕方がない」
この返しに周囲は沸いた。
虎男など腹を抱えて大笑いする有り様だ。
もちろん、フォグルが合わせる事はなく、むしろ不快感を増す事となった。
両手に宿る意思の力。
それは机を叩くという反抗的な態度によって現れた。
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