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場の空気は一転して剣呑となる。
虎男が「死にてぇのか」と怒鳴り、カマキリ男も両手の大鎌を掲げながら立ち上がった。
あからさまな威圧なのだが、フォグルが動じることはない。
「あなたたちの供応は、享楽は誰のおかげだと思っているのです?」
「あんだとぉ!?」
「何ら貢献することなく連日にわたって大酒を飲み、無駄飯を喰らい、空威張りする。それが誰の犠牲によって為されているか、考えた事がありますか?」
「何が言いてぇんだオイ!」
虎とカマキリがフォグルを挟み撃ちにする。
丸太をも砕く拳は彼の腹を、鉄を両断する程の鎌は首を跳ね飛ばすべく繰り出された。
一般人であれば即死の威力を誇る。
だが相手は霧の魔人だ。
それらは虚しく空を切り、両怪人は間抜けな顔を晒すばかりである。
その両者に冷たい言葉が静かに告げられる。
「解らないのであれば教えて差し上げましょう。この煌びやかな晩餐の犠牲者は……」
言い終える前にフォグルは両足を力強く開き、同時に両手を左右に繰り出した。
それは掌底にも似た動き。
特別な訓練を受けていないために型はお座なりであるが、その威力は凄まじいものだった。
虎男の逞しい腕は不自然にねじ曲がり、カマキリ男の鎌は亀裂が走り、その痛みで悶絶した。
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