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第1話 霧の魔人
ーーおい、新型の様子はどうだ?
ーー全然ダメだ。SR値は最大検出350。攻撃的な特殊能力ナシ。これは廃棄した方が良さそうだな。
フォグルはその会話を液体越しに聞いた。
更にその向こうはガラスで隔たれており、言葉は不明瞭でくぐもっていたが、ひとつだけ明確に感じたものがある。
……自分の何かが落胆させてしまったのだ、と。
実験室の一角には大きなガラス管が幾つも並べられており、フォグルはそのうちの1つに押し込められている。
中は薄緑の液体で満たされているが、呼吸器の用意があるので溺れる心配はない。
もっとも今は、水死とは違う形で命を奪われようとしているが。
廃棄ーー。
軽々しく放たれた言葉は処刑と同義である。
フォグルは長い年月と莫大な資金を費やして産み出されたにも関わらず、陽の目を見ること無く殺処分されようとしている。
囚われの身からすれば絶体絶命の危機なのだが……。
そうか。僕は失敗作なのか。
まるで他人事のように決断を受け入れた。
悲観や恐怖といった色をおくびにも出さずに。
確かにフォグルの容貌を見る限り、とても傑作などとは呼べないそうにない。
細く均整の取れた体つきは美しくもあるが、ひどく貧相である。
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