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開催
1
「百とか無理だって」
就職サイトによる企業エントリーが一斉に解禁になった十二月。大学生にとって一番大変で大切な時期がやって来た。
「まだ始まったばかりだろ」
「そうかもしれないけど、予めエントリーしようとしてたとこ全部しても、半分の五十もいかなかったんだよ」
三年生の沼田大地と倉木遼は、講義が始まるまでの間、解禁したてのエントリーについて話していた。
「遼はどのぐらいした?」
「第一志望の銀行だけしかしてないから、そんなに数はない」
「おっはよー」
朝から元気な声が講義室に響いた。部屋にいた大半の人が、反射的に声の主の方へ視線を向けたが、当の本人、藤崎優は注目を浴びていることなど気にも留めず、手を振りながらこっちに来た。
「何の話してるの?」
優が来たので、二人は席を詰め、その空いた通路側の席に優は座った。
「就活。エントリーどのぐらいしたかって話」
「もうしたの?」
大地の答えに、優は驚いた。
「まだしてないの?」
今度は大地が驚く番だった。
「昨日からエントリーできるようになっただろ」
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