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これでよかった
バレンタインの日、私は放課後に志田君を呼び出した。
すーっと息を深く吸い、はぁーっと吐き切る。
それを何回か繰り返して心を落ち着かせた。
いける、私ならいける。
その時、ガラガラと教室のドアが開いた。
入ってきた志田君は私を見ると軽く数回会釈をした。
「急に呼び出してごめんな。志田君に言いたいことがあって・・・」
私はさっきまでの緊張を吹き飛ばすかのような笑顔を無理やり作ってみせた。
「あ、いけるよ」
すかさず、志田君も戸惑い気味の笑顔を作ってみせる。
「あのな、めっちゃ言いにくかったけん言おうかずっと迷っとったんやけど・・・」
ここまで言って急に私の口は閉じてしまった。
焦って口を開こうとしても言葉が出てこない。
こんなはずやなかったのに。直前に言うことは何回も練習したのになんで・・・。
志田君はそんな私を少しの間見つめていたが、さすがにどうしていいのか分からなくなったようで、近づいてきて「いける?」と私の顔をのぞき込んだ。
「うん、ごめん。ちゃんと言うわな」
やっと口が開いて言葉を発する決心がついた。
そのまま唐突に話を切り出す。
「なんか、こんな日に呼び出してなぁ、チョコくれるとでも思った?」
「え!?」
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