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すぐに見つかる。じきに戻ってくる。みんながそう言ってサスケの帰りを待った。いつでも中へ入ってこられるように、玄関の戸もずっと開けたままにした。寒い風が吹き込んでも、誰も文句を言わない。
しかし、祈りも空しく、サスケは丸一日姿を見せなかった。その翌日も、翌々日も帰ってこなかった。
母が今日ひたすら電話をかけている様子を見かけたが、警察や保健所、市役所、それから動物病院にも連絡を入れているようだった。どうやら母はもう、万が一のことを視野に入れているらしい。悲哀に満ちた背中が揺れているところは、こちらまで辛くなってとても見ていられなかった。
事件から丸三日が過ぎた今夜、俺は毛布をかぶりながら体を丸めていた。
家から猫がいなくなれば。今までそう考えたことは数え切れないほどある。
室内から動物がいなくなることで、ずっと生活がしやすくなるはずだった。毛が舞うことも、ゴミ箱を荒らされることも、家の出入りに気を使うこともなくなる。それは幾度となく夢に描いた理想の家だ。
つまり叶った。叶ったはずなのだ。けど、俺はこんな、毎日が不安で、家じゅう陰鬱としてしまうような結果を求めていた訳じゃない。
こんなもの、願った未来とは違う。
そのやるせなさに、眠れない俺はただ襲われた。
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