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「にゃーう」
「…………」
「こーらサスケ、お兄ちゃんのご飯の邪魔しちゃだめですよー」
大学から帰ってきて、ラップが敷かれた一人分の夕飯の前に座った直後、白猫のサスケが姿を現し、太ももに前脚をかけてきた。
俺は一切口を開かないまま据わった目でサスケを見下ろした。すると母が台所からやってきて、俺からサスケを引き離すようにすっと抱き上げ、台所へ連れて行って戸を閉めた。
それを見届けて、改めて夕飯に向き合いラップをはがす。いざ箸をつけようとすると、肺が萎む感覚と共に深い吐息が吹き抜けた。
俺は動物が苦手だ。三年前、俺が高校一年生の冬だったか。テスト勉強している最中に突然母が部屋に入ってきて、手のひらに収まるくらいの小さな仔猫を見せてきたのが最初だった。本当に何の知らせもなくて、唐突に猫が家の中で飼われ始めた。
そうしたらどうだ、散乱する毛や吐瀉物を始め、私物は目を離すとすぐに遊ばれるし、ものを落としたり倒したりなんてしょっちゅうのことだ。それがどうしても生活を侵害されているように思えて仕方がなくて、目を瞑って許すなんて到底至難の業だった。
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