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そんな意図も構わず、サスケはこちらをロックオンし次第、のそのそと近づいてきては甘えだすから困ったものだ。その体とふれないように一定の距離を置きながら、俺じゃなくて遊んでくれる人のところへ行けばいいのに、と毎度のように考える。
母の手により茶の間のそとへと連れ出されたサスケの声は、もうどこからも聞こえてこない。恐らく諦めて、布団の敷いてあるどこか暖かい場所にでも向かったのだろう。
大人しくしてもらっている分には一向に構わない。存分に眠ってくれと思う。
考え事をしていればじきに皿の上も空になった。指を上手く使って食器を束ね、流し台に下げにいく。
「ごちそうさまでした」
「はーい」
まだ手をつけられていない洗い物の中に、崩れないようバランスよく食器を重ねる。あとは歯を磨いてから風呂に入って、と頭の中で手順を振っていると。
「杏夜、春休みいつからだっけ」
母に声をかけられ、洗面所に向かっていた意識を引きとめる。
「明日、補講一コマやって終わり」
現在は一月末。明後日から長い春休みに入る。
「いいねぇ、お休み」
自分のことのように嬉しそうにしている母に、少し笑って頷きかけた。
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