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サスケは白猫だ。どの色の中でも最も目立つ無彩色。脱走直後はしばらく捜して回ったのだろうが、母の口ぶりから推測すると、サスケは忽然と姿を消したことになる。見つけやすい体毛をしているにも関わらず、その影をちらつかせることなく雲隠れしたと言うのだろうか。
けど、猫はあまり遠くには行けないはずだ。ただでさえ臆病なサスケが、この敷地を出られるとは思えない。
俺は荷物を背負ったままそっと庭に出た。その辺りに姿を見せてはいないか、百八十度、じっと目を凝らして望遠する。
白い影はどこにも見当たらない。屋根裏にでも入り込んでしまったのだろうか。いや、屋外を知らない猫が屋根裏の入口を見つけることは考えにくい。入口があったとしても狭いだろうから、きっとサスケのサイズでは入れないと思う。
それなら、裏の竹やぶの後ろにドブがある。そこに落ちたという可能性はどうだろう。いや、あそこの水位はさほど高くない。もし仮に足を滑らせていたとしても、あれくらいの高さは自分の脚力で簡単に抜け出せるはずだ。
じゃあ、やはりどこかに潜り込んでびくびくしているのだろうか。怖がりのサスケが、狭いところで身を縮こまらせて震えている姿が目に浮かぶ。
……もしそうなら、早く見つけて安心させてやりたい。
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