3人が本棚に入れています
本棚に追加
〈第七章〉コンプレックス再び その2
「誤解を恐れずに言ってしまうと、
ひろこさんはタカヒトにとって“最初の女”です。」
「は?」
何を言っているの?
ひろこはびっくりして目を見開いた。
トオルは笑って続けた。
「いやね、あいつに女性経験が無かったというわけじゃないんですよ?
ただ、あいつはあのとおり”王子様“でしょ?
あいつが初めて王子から生身の男になった相手が、ひろこさんだったんです。」
噛み砕くようにトオルが言った。
「あいつ、淡白だし、付き合う女に手を出さないので有名で。
付き合っても肉体関係にならないから、
歴代の彼女たちは向こうから離れていきましたし
あいつから誰かを好きになる事もありませんでした。」
「昔から王子然としていたのね。」
付き合い始めての一ヶ月。
毎日毎日やつれるほど求められていたのに、嘘のようである。
「今となっては信じられないけど・・・。」
「本当ですよ、ユキエに聞いてもらってもいい。
あいつはタカヒトのことを最初好きだったんです。
でもあまりに脈が無いので、俺が相談に乗ってるうちに・・・」
「恋に落ちたんだ?」
なんだかドラマのような話だと思った。
「いや、俺は最初からユキエが好きだったんです。タカヒトが羨ましくて。
最初のコメントを投稿しよう!