〈第七章〉コンプレックス再び その2

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だけどあいつは王子様だったから、勝算はあると思ってました。」 トオルはニヤリと笑った。 「やっと付き合えて、お互いに心を許せたかなと思ったときに、 すぐプロポーズしました。」 「学生の時、だよね?親御さんは?反対とかなかったの?」 ひろこは率直に尋ねる。 そういえば、学生結婚の話は聞いていたけど それにまつわる話は、知らない。 二人に話に興味がわいてきた。 「もちろん反対を見越して俺から話をしました。 一部上場企業の内定を取ること、3年勤めるまでは子どもは作らないこと、 二つ条件を決めて、双方の両親に話しをしたんです。」 不敵な笑みを浮かべる。 「すぐに、とは言いませんが、婚約は 今の会社の内定が取れた段階で許してもらえました。」 「ユキエさん、びっくりしたんじゃ。」 「してました。でも俺、あいつじゃなきゃダメで、毎日でも会いたくて あいつが他の男と少しでも話をしていたら、おかしくなるくらいだったんです。」 今の穏やかなトオルからは想像できなくてひろこはびっくりした。 「今のタカヒトがあの頃の俺にそっくりで、見てられないんですよ。」 コーヒーに口をつけると、トオルは笑った。 「好きで仕方なくて、自分をコントロールできないから、     
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