〈第八章〉待ち伏せ

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〈第八章〉待ち伏せ

すると、その時突然トオルの携帯が鳴った。 「タカヒトだ。」 トオルが言う。 二人は目を合わせた。 トオルが電話に出る。 「もしもし?え?ああ、大丈夫。」 心配そうなひろこに、 トオルはオッケーのサインを出した。 「何?ひろこさんの家の前にいる?なんでまた。」 びっくりして目を見開いたひろこに、 黙って!と人差し指で唇を塞ぐ。 しばらくタカヒトの話を聞いていたトオルだが 「ひろこさんが帰ってきてない?ああ、今日は違う。 レッスンの日じゃないよ。」 トオルがニヤニヤしだした。 「どこに行ったかって?俺が知るわけ無いだろ。どうするの? え?帰ってくるまで待つ?」 ひろこが我慢できずに席を立とうとすると、 トオルがそれを制した。 「分かった、好きにしろ。 それなら長期戦になるな。後で差し入れしてやるから、少し待っとけ。」 そういうと彼が電話を切った。 「ちょっと!どうなってるの?」 ひろこが聞くと、 トオルはニヤニヤしながら言った。 「面白い事になってきた。ひろこさん、家まで送ってあげる。」 トオルはそういうと、手早く会計を済ませ店を出た。 ひろこはニヤ付いているトオルを不安げに見つめながら、 彼の運転する車に乗り込んだ。 『いったい何が起こるの?』 そんなひろこを尻目に、 トオルは口笛を吹き始めた。 車はゆっくりとひろこの家に向かった。
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