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〈第二章〉ひろこのため息その2
広くは無いものの、
きちんと整えられたマンションの一室に案内される。
「残り物ばかりですけど・・・・。」
と、遠慮がちに出された料理は彩のよい韓国料理だった。
食欲は無かったが、口をつけると元気が出てきた。
ナムルもスープもとても良くできている。
「美味しい、元気になれそう。」
自分でも心なしか、顔色が戻ってきたように思ったひろこは
そう口に出した。
「ユキエの料理を食べると、元気になるんですよ。」
トオルが言う。
「ユキエさん、愛されてるなあ。」
ひろこはため息混じりに言った。
安心したのか、涙が一粒目から零れ落ちる。
『誰かを好きになりたいって、口癖のように言ってたけど
いざ好きになったらこんなに苦しいなんて、忘れてた。』
涙がもう一粒零れ落ちた。
そんなひろこを、ユキエは優しい表情で見つめていた。
「みゆたん、パパと一緒にお風呂に入ろうか~。」
トオルが溶けそうな笑顔で美雪を抱き上げると、
席を外した。
ひろこはユキエと二人きりになった。
「私でよかったら、話してもらえませんか?
もちろん辛いなら何も言わなくてもいいですよ。」
ユキエの言葉を皮切りに、
ひろこの目から涙が後から後からあふれてきた。
ユキエがそっと柔らかなタオルハンカチを差し出した。
ひろこは泣きながらユキエに
田中さんと食事をしたこと、
王子にそれを見られて誤解された事、
その後強引にホテルにつれていかれ、
事が終わった後何の連絡も取れないことを
打ち明けた。
話し出すと悲しくて、涙が止まらない。
ユキエはそんなひろこの肩を黙ってそっと抱いていた。
夜がゆっくりと更けていった。
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