〈第三章〉カナの決断

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〈第三章〉カナの決断

カナはいち早くタカヒトとひろこ先輩の 異変に気付いていた。 ここ一ヶ月ほど二人の言動がおかしい。 タカヒトは無精髭も剃らずに営業に出て、 得意先に嫌味を言われているし ひろこはひろこで新入社員のような ありえないミスを連発していた。 二人が別れたわけではなさそうだが、 二人の間に何かあったのは確かだ。 特にタカヒトのほうがおかしくて、 ひろこ先輩と目を合わせないようにしているくせに、 ひろこ先輩が自分のほうを見ていない場所では 彼女の事を射るように見つめている。 その目線はいつかの暑気払いのときと同じ性質だが、 あの時よりももっと粘着質だった。 カナでも少し引くくらいの視線に 『こいつ、やばいんじゃ?』 と心配せずにはいられなかった。 居ても立ってもいられなくなって、 ひろこ先輩にそれとなく聞いてみたが、 警戒されているらしく 「大丈夫だよ。」の一言で済ませられてしまった。 ・・・・・大丈夫なはずは無い。 仕方ない、ここは一つタカヒトでも呼び出して事情を聞くしかない。 カナは重い腰を上げようとしていた。 正直タカヒトに未練が無いわけではない。 だが、彼のひろこ先輩への思いを見せ付けられて、 カナはすっかり諦めていた。 そうなると、この二人にはちゃんと くっついてもらわないと収まらないのである。 誰にも頼まれてはいないけれど おせっかいを焼く気満々のカナは、 タカヒトを半ば強引に駅前のスタバまで呼び出した。
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