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〈第一章〉ひろこのため息
ひろこは長いため息をついた。
あの日以来、タカヒトとは1ヶ月ほど連絡が取れていない。
電話は留守電になるし
会社では目も合わせてくれなくなった。
毎日が憂鬱だった。
『最初から分かってた事じゃない。彼と私は釣り合わない。』
そうは思っても、悲しくてぼんやりと宙を見る時間が増える。
仕事でのミスも増え、なんだか自分がイヤになってきていた。
『仕事と趣味が心の支えなんだから、せめてこれだけは頑張らないと。』
自分に言い聞かせる。
今日はハングルの日だった。
トオルとも久しぶりに会う。
彼に会うと、タカヒトのことを
思い出さずにはいられないけど
だからと言って、トオルのことを嫌いになったりはできなかった。
手持ちの仕事を終わらせて、彼女は片付け始めた。
ハングルの教室で、
「ひろこさん、どうしたの?」
トオルに会うなり開口一番に言われた。
ひろこは苦笑いする。
『そんなに顔に分かりやすく出ているのか・・・・』
「あはは、そんなにひどい?」
「ひどいって言うか・・・・、マジで心配レベル。」
真剣な表情で彼は言った。
「何かあったんです?」
聞かれてひろこは黙った。
男にしては話しやすいトオル相手にも、言いにくい事はある。
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