苦くてしょっぱい。

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「……せ……せ、先輩っ! 好きですっ」 歯磨き粉の最後のひと絞りみたいに、なかなか出て来なかった割にぽんと勢いよく放たれたその言葉は、けれど俺の元までは飛んで来なかった。 二月の刺すような冷たい外気に当てられて、へなへなとアスファルトの上に墜落していく。 まるでガキの頃に作った、出来損ないの紙飛行機みたいだ。 真っ直ぐ飛ぶフリして、急に小さく旋回してその辺に落ちるアレ。 「ふーん、そう」 素っ気なく返事をすれば、小さく息を呑む音が聞こえて、目の前の彼女の瞳が揺れた。 どうせ泣くんだろって思ったのに、彼女は潤んだ瞳のまま、真っ直ぐに俺を見つめた。 気弱そうな見た目のわりに、なかなか根性あってびっくり。 「……これ、受け取ってください」 か細い声と共に差し出されたのは、赤い包装紙で綺麗にラッピングされた四角い箱。 「ごめんね、俺、チョコ苦手」
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