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あいつの笑顔みたいにふんわりとした初雪が舞った、一年前の今日。
休日のバレンタインデーにわざわざ呼び出すなんて、もしかしたら美織も俺のことが好きなんじゃないの?
だって義理チョコだったら、明日学校で渡せばいいだろ?
好きって言われたらどうしよ。
どうしよ、なんて答えは決まってるけど。
自分から告白する勇気もないくせに、そんな甘ったるい期待をしてソワソワしながら、昼飯のオムライスを食べる。
俺のオムライスにはケチャップでハートマークが描かれてた。
「なにこれ」
「バレンタインだから。どうせ誰からも何ももらう予定ないんでしょ」
母親からの憐れみの言葉に、俺のテンションは余計に上がる。
「今年は特別なんだよ」
ニヤニヤして答えて、本気で気持ち悪がられた。
今日は特別な日。
特別に甘ったるい一日になるかもしれない日。
どうしても上がってしまう口角のまま、オムライスの最後の一口を口にした時。
Prrrrrr……
リビングの電話が鳴った。
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