読書感想

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

読書感想

東京裁判で追及されたことは「他国を侵略した罪」と「他国の捕虜や抑留民を虐待した罪」です.つまり、連合国が受けた被害を問う裁判です. 従って、「日本の国民の生命財産に損害を与えた罪」で日本の戦争指導者を裁いたわけではありません. けれども、東条英機とか広田弘毅とかが戦犯として処刑されたことで、戦時責任のすべてが帳消しになったと国民は考えているんじゃないのかな.そんな気がします. 戦争を放棄して軍隊を持たないのなら戦争責任を有耶無耶にしていてもいいのかも知れないけれど、憲法9条改正して再軍備をすると言い出しているのだから、大東亜戦争の戦争指導者についての責任を明らかにして置かなければ、また同じことが繰り返されますよ.そう思いませんか. 大東亜戦争の戦争指導者に対して「日本の国民の生命財産に損害を与えた罪」で裁判をする必要があると思いますね.日本の国会は今から、日本国民の生命財産に損害を与えた戦争指導者を特定して、被疑者死亡のまま弾劾すべきですよ. 軍部軍属の権益拡大のための戦争に国民を徴兵した罪.特攻を命令した罪.学徒出陣を決定した罪.沖縄戦で民間人を戦闘に巻き込んだ罪.昭和20年まで終戦工作を行なわず戦争継続させて国民の生命財産に多大な損害を与えた罪.特高警察や思想検察が行なった人権侵害の罪、等々. たとえば特攻だなんて、効果のない戦法ですよ.単なる時間稼ぎに過ぎませんね. 学徒出陣で戦争が出来ると考えていたんですかね.昨日まで鉛筆を持っていた学生に軍服着せて鉄砲を持たして前線に送って、何をするんでしょうか.只の人数合わせですよ. 捕虜になるくらいなら自決しろなんて、どう云うことですか.自国の兵隊が減るんですよ.何が目的ですかね. 一億総火の玉で最後の一人まで戦うなんて、つまり全滅しろと云うことですよ、戦略でも戦術でもないですね.唯単に、戦争指導者が国民を道連れにしようとしたと云うことですよ.戦争の目的は何だったんですかね. 現政府は、東条英機とか岸信介とか石原莞爾とか近衛文麿とかの戦争指導者一人一人対する戦争責任について、日本国民の生命財産が犠牲になった観点からの見解を出すべきですね. あと、よく言われることですけど、アメリカがやった東京大空襲は一般市民に対する虐殺ですね.広島長崎への原爆投下も同じです.人道に対する罪でトルーマンを日本政府は被疑者死亡のまま国際刑事裁判所に提訴すべきです.それから、ソ連が日本兵をシベリアに抑留したことについて日本政府とソ連政府の間でどんな密約があったのか知りませんが、捕虜虐待の罪でスターリンも被疑者死亡のまま提訴すべきです. 損害賠償を請求する必要がありますよ.ともかく戦争に負けちゃったんだから、今更何でもいいや、水に流しちゃえなんて云うような考えは、戦争指導者のやった事を肯定している事と同じですよ.そう思いませんか. それでは前口上はこれくらいにして、この新書の内容について幾らか紹介してみたいと思います. 第2章はインド代表のパル判事の反対意見について言及しています. (P083、P086より引用) ・・・パルは、その「反対意見」を理由に、極東軍事裁判の偉大な英雄として日本で讃えられてきたが、かれの意見の内容を分析したり読破した者は、その支持層においても数少ないように見受けられる. しかもパル意見が称賛されるのは、被告人全員が無罪と結論したからであって、必ずしも、その無罪という結論をパルがどう説明し根拠づけているかではない. しかし、裁判官による判決の質を判断する基準とは、自分がその判決の結論に賛成するかどうかではない.受理された証拠に対して法が公正に適用され、その結論が妥当だと判断できるかどうかである・・・しかし、本章であきらかにするとおり、パルはこの職務を完全に怠った・・・ ・・・パルが、西洋諸国の植民地主義や帝国主義を憎悪したのはその意見からあきらかであるが、それは法廷で争われる法律問題とは無関係である.ところが、まさに西洋諸国の植民地主義や帝国主義を断罪することがパル意見の核心であり、要するに、法ではなく政治がパルの最大の関心事であった・・・ (引用終り) パル判事が判決に対して反対したことは知っていましたが、詳細までは知りませんでした.きっとパル判事は、戦勝国の一方的な判決に対して正当な反論をしたのだろうと、なんとなくそう思っていました.しかし、それは違いました.インドが英国の植民地からの独立運動の最中であったので、大日本帝国を擁護したのは、飽くまで英国の植民地政策に反旗を翻すための政治的な判断として、パル判事はA級戦犯被疑者の有罪判決に反対の姿勢を見せただけだったのです. 余談ですけど、パル判事もヒトツいい事を言ってます. (P114より引用) ・・・パルはまた、その冒頭陳述でジャクソンが前提とする国際法秩序を「観念的仮装」にすぎないと断罪し、「平和的変更のための機構を準備せずに、たまたまそこに存在する現状を永久に続けようとする策」と批判を重ね、実質的に、国際法の総体を欺瞞に満ちたものとして峻拒している・・・ (引用終り) パル判事はインドがたまたま現状で英国の植民地であるからといって植民地状態が永久に続くのかと憤っていたのですね.これを現代の日本に当てはめれば、立憲君主制も偶々そこにあるだけで、永久に続ける必要はないと云うことですよ.速やかに共和制に移行して、共和国防衛軍を設置して、在日米軍を撤退させたらいいと思いますね. えーと、話をもとに戻します. (P123より引用) ・・・おそらくパルは、ベンガル出身のナショナリストとして、西洋諸国による抑圧を肌で感じていた. 実際、その「判決」には、第二次世界大戦とその結末 ―― つまり連合国の勝利 ―― に対する痛恨の念が垣間みられる. あるいはパルには、たとえ日本自体が植民地主義/帝国主義国家であろうとも、そしてたとえ多大な人的代価があっても、日本が勝っていれば西洋諸国に支配される国際秩序をくつがえすことができた、との期待があったのかもしれない・・・ (引用終り) まぁ、大日本帝国が勝利していたなら、英国の代わりにインドを植民地にして皇民化教育をしていたと思いますけどね.それはそれとして、戦後の日本人に取って、東京裁判を否定してくれたパル判事の主張は救済に思えたんでしょうね.筋違いの救済ですけどね. 第3章は、レーリンク判事の反対意見について言及しています.レーリンク判事とは、オランダ政府代表だそうです.この新書の著者はこのレーリンクの意見もパル判事の意見と同様にレベルは低いと考えているようです. 多分、レーリンク判事は軍国主義者なんでしょう、それで戦争を起こすのは自由だと思っていたんだと思いますよ.それでそういう主張をしたら、オランダ政府から圧力を掛けられたんだと思います.これは僕の憶測ですけどね・・・ 第4章は、オーストラリア代表のウェブ判事の個別参考意見について述べられています.ウェブ判事の個別参考意見は、他国を侵略した罪と捕虜や抑留民を虐待した罪について、東京裁判の判決と結論は同じですが、その論理の展開は極めて妥当であると、この新書の著者は判断しています. そしてこの章では、平沼騏一郎や広田弘毅や重光葵など、個別の事例を挙げて解説しています. (P223より引用) ・・・この会議に政府を代表して出席した東条首相兼陸相は、英米欄との戦争が不可避である旨を主張したところ、平沼は賛意を表し、戦争の開始を支持する立場をとった. ウェブが指摘するところによると、平沼は「日本は精神力についてはアメリカと同等だが、物力の上では疑いがあると述べた.そして愛国精神を起こさせるための適切な処置をとるよう推進した」ということである.平沼は、戦争末期に至っても戦争の続行を主張し和平交渉を拒絶したが、それらの事実が証拠から知られ、これもウェブ判決書草稿に記されている. ウェブによると、平沼は1945年4月5日のある会議で、「和平を主張することや戦闘行為を停止することは断固反対で最後まで戦うほかない」と述べたという・・・ (引用終り) ウェブ判事は平沼騏一郎を主戦論者と断じ、侵略戦を遂行したかどで有罪としています.これを勝者の裁きと呼んでも呼ばなくても、いづれにしても、平沼騏一郎が罪に問われたのは、他国を侵略したのかと云う事ですね.しかし、降伏せず最後まで戦うとは、国民が全滅しても構わないと云う事ですよ.国民の生命財産を犠牲にしても平気でいられる人物が、戦争指導者であったなんて酷い話です. 更に、この章では戦争犯罪に対する証拠保全について言及しています. (P238より引用) ・・・戦争犯罪に対する政府や軍指導者の責任追及とは概して難しく、それは東京裁判に限られない. 難しさの理由は主に二つある. 一つ目は・・・日本政府や軍当局による大量の文書焼却などによる戦犯捜査の妨害があった.・・・ (引用終り) 自分達に責任があることを明確に理解していたから廃棄したのですよ.公文書の廃棄や改ざんは官僚の伝統ですね.文書が残っていれば、所謂A級戦犯以外にも悪辣な政府高官、高級軍人がいた事が明らかになったと思いますね.今からでも調査追及すべきですよ. 終章の中で昭和天皇の責任について言及しています. (P276より引用) ・・・ウェブはその「個別意見」で「天皇の免責」と題した節を設け、問題の核心をついた次の一文により記述をはじめる. 天皇の権限は、かれが戦争を終わらせたときに疑問の余地がないまで証明された.戦争を終わらせたときと同様、戦争を始めるにあたって、かれが演じた顕著な役割は、検察側によって導き出された否定できない証拠の対象であった. さらに、「戦争を行うには、天皇の許可が必要であった」のであり、「もしかれが戦争を望まなかったならば、その許可を差し控えるべきであった」と指摘する. そして、天皇がもし戦争開始の許可を差し控えたならば、天皇自身の命の危険があったかもしれないという弁明にも答えている.ウェブによると、「この危険は、自己の義務を危険があっても遂行しなければならない統治者のすべて」が負うものであり、「いかなる統治者でも・・・そうしなければ命が危うかったというにであるからといって、それを犯したことについて、許されるものと正当に主張することはできない」.よって、これは弁明として成り立たないとの見解であった・・・ (引用終り) 元首だったわけですから昭和天皇の戦争責任を有耶無耶にせず日本政府はハッキリとさせる必要がありますよ.象徴から元首に戻すつもりなら、国会で議決して政府は見解を発表すべきですね.今後再軍備して戦争を始めた場合、元首の責任はどこまであるのか、明らかにしておいてもらいたいものです. (了) ―― 奥付 ―― 読書感想文『東京裁判「神話」の解体(D.コーエン 戸谷由麻)』 著者:茜町春彦 読んだ本の題名:東京裁判「神話」の解体 著者:D.コーエン 戸谷由麻(ちくま新書、880円税別) 発行:2018年11月10日第1刷
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!