黄色いランプのサーバント

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 ビビッ・ビビッという、軽故障のブザー音と共に、黄色いランプが派手に回転しながら点滅する。ベルトコンベヤが自動停止する。 「皆、ホールドアップ!」  天井にぶら下がったLEDに「軽故障・自動ライン停止・7番」と表示が出ると共に、PC端末のモニターの管理ソフトの警報メッセージを覗き込んでいた西口智夫はそう言いながら立ち上がり走り出す。30m程あるベルトコンベアの真ん中、天井に「3番線-7」と書かれた作業ブロックの前に着くや否や西口が早口で言う。  「東山さん、4Gのブロックに3Aの用ギヤ入ってます、すぐに安全に丁寧に交換して!間違って組んだギヤは検査するから俺に渡して。」  チョコ停という言葉がある。製造現場では一般的に使われている言葉で、すぐに復旧できるが一時的にラインを停止する必要があるトラブルのことだ。チョコっとの間の停止とか、チョコチョコ発生するからというのが語源らしい。  7番の作業ブロックにいる東山は西口の顔も見ずに軽く頭を下げ、すぐに指示どおりの作業を実施する。チョコ停の時は挨拶は頭を下げるだけ、作業終了のミーティングで回数と発表し、ミーティングの後に個人への注意をして謝罪を受ける。稼働中はラインの復帰を優先するのがこの工場の決まりだ。  東山が間違えずに部品交換して、また両手を上げたのを確認して西口は自分の席に走って戻り、PC端末のチェック画面のボタンを押す。PC端末にグリーン表示が出て、ブザーが止まり、黄色いランプが消灯する。
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