黄色いランプのサーバント

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 ライン終了の5分前になると天井のスピーカーから軽快な曲が流れだす。この時点で最後の作業を実施する。終了の時間になるとラインは一斉に自動停止する。皆、各部品のケースと組み上げたユニットにゴム付きの透明フィルムをかぶせる。西口の席に皆が集まり、ミーティングで今日の完成数とチョコ停の回数を伝える。ミーティング終了後にチョコ停を出した3名だけ残し、発生件数の少ない者から順番に謝罪を受け、注意を実施する。  「すみませんでした。私、5回も止めてしまって。」  最後に残った東山千代子が帽子とマスクを外して西口に頭を下げる。小柄で眼鏡におさげの彼女は中学生に見えるが、1年には満たないが地元の工業高校の機械科を卒業した立派な社会人である。  「まあ、1ラインで4種のユニットをバラバラに作るの自体が難しいからね。あの北川さんでも当初は良くチョコ停させてたから、まだしょうがないよ。組む速度は皆と変わらなくなってきたから、これから気を付けてね。ただ、次への時間はないから、そこは意識して。そしてギアの交換後はしっかり俺の動きを見ているように。」  西口は罵倒することなく、優しく注意する。女の子だからというよりも西口の性格上で怒るコトはまず無い。怒鳴るよりも相手が理解するほうが大事だし、この〇〇ハラスメントの時代は会社も西口のような指導を良しとしている。そのわりには西口はこの後のライン長ミーティングでは良く怒鳴られるのだが(笑)       
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