発覚

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三人はミクロスコープを使ってミクロサイズに縮められた体で、目、鼻、耳の三カ所の別々のルートから目的のパスワードを目指します。別々の場所からスタートさせ三人を協力させず競わせるのは、こういった脳サルベージでは基本的な事です。何しろ脳サルベージは被験者の脳に対するダメージが非常に大きいのです。それは死者の脳といえども例外ではありません。ダイビングを受けた脳はダイビングされる前と比べて多少でも物理的な変質をきたし、それに伴い蓄積された情報にも影響を与えてしまうからです。ですから脳ダイビングではよりエネルギー効率の低い運動が必須となります。三人を競わせることによってそれぞれのダイバーはより能率的で無駄の無い最短ルートを模索しようと意識するのです。スタートの位置はくじ引きで決めますが、目的の情報が脳内のどの部分にあるかは実際に脳ダイビングを始めるまでは分からないので公平です。 端的に申しますと、マクスウェル氏の脳からの仮想通貨のパスワードのサルベージは成功しました。勝者はハンナ・ハミルトンで1時間25分で無事生還しています。残りの二名はダイビング中に死亡しました。二人はダミーの情報、ポルノサイトのパスワードを奪い合って足を引っ張り合ったようです。ハンナはいち早く情報の信憑性に疑問を持ち、その場を離れて正しい情報にアクセスしたのでした。 仮想通貨のパスワードが無事戻り、凍結されていた160兆円のコールドキャッシュは再び市場に戻ることになりました。こうして市場では仮想通貨への信頼は回復するかに思われました。しかし結果は反対で、世界中で仮想通貨取引所からCEO誘拐事件が頻発する事態となりました。何しろ今回の事件では、その持ち主が生きていようが死んでいようが、パスワードさえ分かれば大量の仮想通貨を好きに出来るという新たな脆弱性が発覚してしまったのです。無理もありません。90493.89.9.イエ
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