俺と幼馴染とチョコレート

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◇◆◇◆◇ 「……世莉(せり)」  俺の呼びかけに、俯いてた真っ黒な頭がびくりと跳ねた。  でも、それ以上の動きは見せない。  じっと膝を抱えて俯いている。 「お前、おばちゃんと喧嘩するたび家出先は俺んちの庭ってどうなの」 「う、うるさいです雄陽(ゆうひ)くん……」 「で? 今度は何だよ。またおばちゃんに髪切れって言われたか」  ぶんぶんと頭を振って否定する世莉から、鼻をすする音がした。  ……また泣いてる。おばちゃん――世莉のお母さんは、ここ最近無理難題を押し付けてくることが増えた。  バイトをさせようとしたり、髪を切ろうとしたり、果てにはなぜかカラオケ大会に出ろとまで言ってきた。  どう考えてもどれも世莉にハードルが高すぎる。  大学生になっても変わらない世莉に、焦ったんだろうか。  でも、嫌がった世莉が泣いて家を飛び出すと必ず俺のところに来る。泣きながら、「またやってしまった」って。  仲が良い証拠だとは思うんだけど、おばちゃんやりすぎ。 「せーり。おら、帰るぞ」 「か、かか、帰ったら、ドナドナ、なんです」 「は?」  いつも敬語を使う世莉は、19年の付き合いの俺に対してもこうだ。  どこか壁がある感じが気にいらないからやめろって言い続けてるんだけど、何ひとつ変わらない。  あと、人付き合いをほとんどしないせいか会話のキャッチボールがど下手だ。なんだ、ドナドナって。 .
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