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「よくわからんぞ」
「うう、だって、お母さん、私が外に出ないのは、恋愛しないから、って」
「また突拍子のないことを……で?」
「だから、お見合いを、させるって」
「……は?」
おばちゃん。やりすぎだってば。怒るぞ。
やっちゃったと泣きついてきたおばちゃんが脳裏によみがえる。いつも「ほどほどにな」とは言ってるが、今日ばかりはきつく注意しておかねば。
世莉にこの年まで悪い虫がつかなかったのは誰のおかげだと思っているのか。
「そんなもん、絶対にさせねえから」
「ほ、ほんとう?」
「ああ。俺がお前に嘘ついたことあるか?」
「わりと嘘ばっかつくもの雄陽くんんん!」
うばあああっと泣かれた。申し訳ない。
思い返してみればほんと嘘ばっかついてるわ。それもわかりやすいの。申し訳ない。
いやでも反応がおもしろいから、つい。出来心で。
「泣き過ぎだよ」
「は、半分は、雄陽くんのせいだと思う……」
「うっせえ」
ぐしゃぐしゃの顔を服の袖で拭ってやると、いつもは長い髪に覆われている目がこっちを見ていた。
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