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小さな頃から通い慣れた世莉の家のドアを開けると、玄関に佇んでいたらしいおばちゃんが俺たちを出迎えた。
「雄陽くん、世莉……」
「おばちゃん。勝手にお見合いとかさせんの、やめてくんない」
「え……」
「超迷惑。世莉は俺のだぞ」
「ゆっゆっゆうひくっ!?!?」
俺に抱えられたまま、世莉があわあわと言葉にならない声をあげる。
それでも構わずおばちゃんをじっと見据えて続けた。
「本人が嫌がってることさせたら成長するとでも思ったら大間違いだかんな。世莉のこと大事なのは知ってるから、おとなしく見守っててよ」
「雄陽くん……」
「わかったらほら、ゴーゴー」
「は?」
「うちのおかんと茶でも飲んできてよ。……ごゆっくり~」
ほれ行った行った、と呆けたおばちゃんの背を押して追い出した。
片方しか靴履いてなかった気がするけどいいや。どうせ隣だし。
それより、奇声をあげ続ける世莉のほうが問題だ。そろそろ鼓膜が破れそう。
「うっさいからお前はもう座ってろ」
「うひゃあっ」
ソファに座らせ、ブランケットを頭にかぶせてやる。
リビングはヒーターのおかげで暖かいし、たぶん大丈夫だろう。
「世莉、お前のチョコは?」
「キ、キッチン……」
「貰ってもいいか?」
「い、いいけど、板のままだよ」
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