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「なあ、世莉」
「な、なんですか……」
「さっきの。お前が俺の、って意味。わかってる?」
「……はい」
小さく答えた世莉は、ふるりと頭を振って俺と視線を絡めた。
「でも、今のわたしには、それはもったいない言葉で」
「んあ?」
マグカップを置いて、代わりに俺の手を握った世莉は続ける。
冷たかった指先が温かくなっていて心地よくなったのは秘密にしておこう。
「ゆ、雄陽くん……」
「ん?」
「わ、わたし、雄陽くんに伝えたいことがあるの。わ、わたしの口から、わたしの、言葉で。……だ、だから、待ってて、くれると、嬉しい……です」
「前にも言ったろ。俺は、気が長いって」
そっと世莉の手を握り返すと、猫みたいにすり寄ってきた。無自覚でこれだから、正直困る。
でも、俺は待つって決めたんだ。
――俺の答えは、最初から決まっているから。
「待ってる」
「……うん」
Fin.
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