幸せの土を踏む

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幸せの土を踏む

 僕は、全てがどうでもよくなっていた。いや、全てというのは撤回させてもらおう。ただ一つの事を除いて、あとはどうでもよくなっていた。時刻は午後八時。僕は病室のベッドの上で、夕食代わりのヨーグルトを食べていた。この病室にはベッドが四つあるが、他の三つは、誰も使っていない。病室も窓の外も、単純な雰囲気に包まれている。いつも通りの、なんとも味気ない夜だった。シンプルな味のヨーグルトを頼んだのは僕なのだけれど、それもなんだか悲しい。明日もまた変わらない一日が来るのかと思うと、なんだか人生なんてどうでもよくなってしまう。今が大学生特有の長すぎる夏休みというのも、そう思ってしまう原因のひとつでもあるのだが、何より僕は、数か月前に交通事故で脚の自由を失っている。 「じゃあ、そろそろ私帰るから、早く寝なさいよー」  恋人の山崎優羽が、手荷物を持って言った。彼女こそが、唯一のどうでもよくない事だった。高校からの付き合いで今は遠距離恋愛だが、なんと大阪から東京まで、こうしてたまに見舞いに来てくれる。僕の愛する人であり、憧れの人でもある。 「うん、ありがとう」     
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