幸せの土を踏む

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 僕がそう答えると、彼女はニッと笑って病室を出ていった。扉が閉まる音が部屋に響くと同時に、疲労感と虚無感が一緒になって僕を襲った。寝よう。そう思い、僕は雑に布団を被った。しかし、そこからちゃんとした睡眠を掴みとるのに、二時間ほどかかった。 夢を見た。それがすぐに夢とわかった時点で、僕はなんとなく違和感を覚えていた。僕はベッドの上に寝転がっていた。いつもと何一つ変わらない、病院のベッドだ。目は開けていた。辺りはまだ暗い。窓から差し込む月明かりだけが、殺風景な病室を照らしている。この状況は現実となんら変わりはなく、違和感も無い。しかしなぜか僕は、これが夢であるという確信をもっていたのだ。  それが何なのか考えていると、どこからか声がした。 「おい、お前」 成人男性と若い女性、そして幼い子供の声をちぐはぐに繋いだような声が、部屋中に響き渡った。お前というのは、まあ僕のことだろう。不気味だが、僕は至って冷静だった。 「誰?」  答えると、ベッドの横に黒紫色の煙が現れた。煙は空中に留まっており、上部に豆電球ほどの大きさの黄色い点が二つ、横に並んで光っている。その点は、まるで目のようだった。また声がした。 「誰とは失礼だな。オレは悪魔だ」  あくま? 言われてみれば、確かに悪魔のような見た目をしている。僕は少し笑ってしまった。 「僕になんの用?」  半分諦めたように聞くと、悪魔は平然とした様子で言った。 「願いを一つ叶えてやる」     
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