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「え?もう通り過ぎた?」
ゆったんが怪訝そうな顔で外を見る。
「っていうか、なんかおかしない??」
せいじがゆっくりと車内を見渡す。
その目線に釣られて、俺も車内の様子を伺う。
車内には、先程までたくさんの帰宅するサラリーマンや学生で溢れていたのに、いるのは極小数。
さらにその少数の人達でさえ、みんなガクッと下を向いて寝ているようだった。
「……スマホもなんか死んどる」
あつにぃがポケットからスマホを取り出し、画面を確認するも圏外。
俺達も揃って確認するが、全滅。
「…………しかもさ、止まんなくね?この電車。」
俺の一言が、みんなを怖がらせるのは分かっていたが、つい口を出る。
しかも不気味なことに、全く無音で、電車特有の揺れも一切なく
ただ窓の外の風景だけが流れていく。
静かすぎる車内で、全員が一瞬黙る。
全員が少しずつ状況を把握していく音が聞こえる。
「これ、なんか、アレか?ヤバいやつか?」
あつにぃが少し目を泳がせながらなんとか声を出す。
「ヤバい……よね……」
それに小さな声で反応するゆったんも、少し声が震えている。
「……!止まるで!」
ずっと窓の外を眺めていたせいじにぃが叫ぶ。
その言葉通り、外を流れる景色が緩やかになっていた。
その数秒後、車内アナウンスも無いまま、電車が停車した。
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