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俺は嫌な予感しかしなかった。
バッ!と手元のスマホを見ると、時刻は午後六時。
「なあ、あつにぃ?もひとつついでに知ってる……?」
祭囃子は鳴り止まない。
「午後六時は、通称『逢魔が時』っつーのよ」
ドォン!!!!
その瞬間、遠くで鳴っていた太鼓の音が、ホームに鳴り響く。
大きく肩を震わせた3人の背中を押して、叫ぶ。
「っ逃げるぞ!!!!」
一斉に駅の改札へと走り出す。
1番に改札を飛び越えたあつにぃの後ろから、ゆったんが大声をあげる。
「っえ?!無賃乗車?!」
「るっせぇ!!誰もいねぇよ!!」
その言葉に少し笑って、俺も軽やかに改札を飛び越える。
ちらっと後方を確認すると、ゆったんも納得いってなさそうな顔で、しかし呆れ笑いで改札を抜けていた。
駅を出て気づいたが、辺りも全く知らない土地だった。
そして人っ子一人おらず、ただ街灯のみがポツポツと立っている。
しばらく走ってみたが、太鼓の音は鳴り止まない。
むしろ止まって再確認したが、やはりこちらに向かってきているようだった。
「んだよ……俺らをお祭り男にしたいのか?」
俺は後ろを振り返り、3人の無事を確認しつつ、視線の先の祭囃子と提灯の灯りを見つめる。
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