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 ――ちょっと話があるんだけど、放課後時間ある?  突然そう訊かれて、わたしは少しぼうっとなった頭でうなずいた。  鈴木くんはにっこり笑った。 「よかった、じゃ、駐輪場のとこで待ってて。あ、一人で来てくれる?」 「いいけど……なに? 話って」 「そんなに長くかかんないから。じゃあ、後で」  そう言うと、鈴木くんは階段を駆け下りていってしまった。  わたしは依然ぼうっとしたまま、先ほどの会話を反芻していた。  誰もいないのをいいことに、わたしは少しだけ口角を上げた。そのまま、軽い足取りで階段を上る。  そんなわたしを見た友だちが、何かいいことでもあったの、なんて訊いてきたのを、何でもないよ、なんて言ってごまかした。  鈴木くんがわたしに何の話だろう。しかも一人で来てだって! いったいなんだろう? どうしても浮かれてしまう。  わたしは鈴木くんのことが好きだった。  今まで会った同年代の男の子の中で、一番感じの良い子だったのだ、彼は。  何でもそつなくこなして、落ち着いた雰囲気があって。クラスのまとめ役に回ることも多くて。  ほんのちょっと、いいな、と思っていた。  他愛ないことを話すだけで楽しかったし、姿を見るだけでうれしくなれた。  それだけ。  積極的にアプローチなんてしてるわけじゃないし、向こうはただのクラスメートとしか思っていないだろう。  それでも、わたしは鈴木くんが好きだった。
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