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◇
放課後、駐輪場で待っていると、鈴木くんがやってきた。
「ここじゃあれだから、ちょっと」
と鈴木くんが言ったので、そのままふたりで近くの公園まで歩く。わたしは緊張していて、どこかおかしかったかもしれない。
公園にある四阿のベンチに、近すぎない距離を保って座った。
「ごめん、わざわざ呼び出して」
「ううん、それで……話って、何?」
「あー、えっと、あの、さ……ちょっと変なこと訊くけど……」
鈴木くんがこんなふうにはっきりしないのは珍しい。わたしもつられてそわそわしてしまう。
鈴木くんは決まり悪そうに首の辺りをさすってから「相沢のことなんだけど」と言った。
「え? 香苗ちゃん?」
相沢というのは、わたしの友人の相沢香苗のことだろう。
わたしと香苗は小学校が同じで、以来ずっと仲が良い。香苗はわたしたちとは違うクラスだが、香苗も鈴木くんも社交的だからか、一緒にいるところを時々見かけた。
「香苗ちゃんがどうかした?」
「その……相沢って、付き合ってるやつとかいんのかな?」
「え……」
体中の血が足下に下りていくような気がした。周りの音が、遠くから聞こえるみたいに小さくなった。
手がどんどん冷たくなっているのがわかる。それなのに妙に汗ばんでいる。わたしは手のひらを制服のスカートに擦り付けた。
なんで、
「なんで、わたしに訊くの?」
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