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また観たいから
つまらない、くだらない、しょうもない、ほんの小さな油断で俺は崖っぷちに立たされている。面白い映画があった。また観たいから二度同じ映画を観に行った、ただそれだけなのに。なんでこんなことに…。
「前より『安心して』泣ける」
クライマックスのシーンで余計な一言を彼女にうっかり言った瞬間、彼女はスクリーンだけを観て俺を一切視界に入れないように向き直ってしまった。
エンドロールとともに流れる主題歌I beg youが終わると明るくなった場内で彼女が呟く。
「I beg you.お願いするって言うより乞うってイメージ」
彼女は独り言のように言うと、飲み物のコップとポップコーンの空の入れ物を載せたトレイを持ってさっと席を立ってしまう。
「違うんだってば」
「友達と行っただけ」
「サイトでネタバレ見たから」
言い訳をしようとしたのに全部遮られて、俺は慌てて彼女の後を追いかける。彼女は几帳面に紙コップからプラスチックの蓋とストローを仕分けして、手際よくゴミ箱に放り込むと俺の方を振り返りもせず早足で歩いていく。
彼女の手を取って、
「ごめん…。」
情けない、か細い声を絞り出すと、
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