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2月14日朝、世の男性たちが不自然にそわそわする中、私は鞄ひとつで職場へと向かう。
極力そのような類いのイベントとは関わらないように今まで過ごしてきたつもりだが、どんな職場においても必ず一人か二人くらいは、相手が女性であろうが男性であろうが容赦なくチョコレートを配り始める輩がいるのだ。
「はい、先輩、ハッピーバレンタイン!」
お祝いに仕事量が減るならまだしも、いつもと変わらぬ金曜日にハッピーもラッキーもない。
「ありがとう。ついでに郵便物でも配ってくれたらさらに有難いけど。」
「何言ってるんですか、今日はバレンタインなんだから、堅いことは言わずにチョコでも食べてくださいね?先輩」
机の上はすでに有名店の袋や後輩がつくったであろうお菓子で山ができていた。
昔から同性にも異性にも好かれる方ではあった。
消費戦略にまんまと騙される日本人にうんざりする思いで机の袋の山を掴んだとき、その中のひとつにふと違和感を感じた。
袋の中が空なのである。
誰のいたずらかと思い机の下で袋を開けてみるとそこには花屋さんのお洒落な名刺が入っていた。
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