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玄関のドアを開けると電気が点いており、食卓には花瓶と手のひらサイズの高級そうな箱があった。
これは、もしかして…
高鳴る胸の鼓動が制御できなくなる前に箱を開けてみる。
丁寧に包装された箱の中身はなんと、
一口サイズのチョコレートだった。
ふっ
予期せぬタイミングでのチョコレートとの出会いに笑いが込み上げる。
「ばっかじゃないの?」
ガチャ
まるでタイミングを見計らったかのように玄関の扉が開く。
「ただいまー」
「ちょっとー!ちょっ、ちょ、おかえり!
なんなの、これー!ドッキリ?
ほんと、チョコレートかと思ったらチョコレートじゃないし、チョコレートじゃない、と思ったらチョコレートだしー!」
ぷっ、くくく
彼は笑いを必死に堪えると、
「みさき、誕生日おめでとう。これ」
私の左手をとると、今度はポケットからチョコレートではなく、キラキラ光る輪を取りだし薬指に嵌めた。
「回り道させちゃったけど、一生大切にします。
結婚しよう。」
それは、誕生日おめでとうよりもずっとずっと待ちわびていた言葉だった。
まるで、その言葉を聞くために今まで生きてきたかのような錯覚と感動と喜びで胸がいっぱいになった。
「私も、大切にする。」
震えそうになる声でやっとそう言い、もらったばかりの指輪をなぞる。
これからは2月14日を堂々と、そして毎年楽しみに過ごせるような予感がしている。
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