ある苦悩

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成功である。 すごく満足だ。鳥である自分。飛べた自分。 地べたを這いつくばる蜥蜴のなんと醜いことか。 虫を食べ、雫を舐めて、枝から枝へ飛び回る日々。 ある日、困った事態となった。ひどく美しい蜥蜴と出会ったのだ。魅惑的な目に、セクシーな背中から尻尾にかけてのライン。彼女が尻尾を右に左に動かす度に、心がぞわぞわする。 しかし声を掛けることは出来ない。 私は誇り高い鳥で、彼女は地べたを這いつくばる蜥蜴なのだ。もし彼女を受け入れたら、私を産んだ母にどう説明しようか。彼女の方はもちろん受け入れるだろう。何せ、私は美しい羽根を持つ鳥なのだ。 しかし、彼女から離れることなんて出来ない。 私はその魅惑的な彼女に、数日付いて回った。 ある日、とうとう、彼女がこちらへ歩いて来た。ああ、なんていい匂いだろう。なんだか心がワクワクする。 私は自慢の舌でぱっと蠅を生け捕ると、彼女に差し出した。彼女の舌が私の舌に触れる。もう、頭がクラクラしそうだ。 私と彼女はすごく気が合った。一緒にいる距離感や雰囲気がすごく自然だった。彼女は歩くのが少し遅いが、私が合わせればどうってことない。     
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