ある苦悩

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私は彼女に付いて陽の当たる岩に登り、一日中そこで過ごしたりした。食べることや水をとること以外に楽しみが増えた。陽の当たらない森の中で、枝から枝へ飛び回るより、ずっと気持ちいい。 しかし、子作りには慎重になった。もし二人で子供を作ったら、羽はきちんと生えてくるだろうか。 ある日、彼女が私に、体を擦り寄せて来た。子供が欲しいというアピールだろう。私は悩んだ末に、彼女から離れることにした。 一人で森の中を彷徨った。彼女のいない人生はなんと無意味で味気ないのだろう。自分はなんて悲しい恋をしたのだろう。水を取る気にもならず、頭をフラフラさせながら歩いた。もうこのまま死んでしまうのも悪くない。 やがて森が尽きた。 風が吹きすさぶ草原を歩いていると、不意に影が私を覆った。ふと、背中を鋭い爪が指し、体が宙に浮いた。ぐんぐんと体が高く舞い上がっていく。ああ、天に召されるとはこういうことなのか。 ギーとけたたましい声がした。そこで漸く、自分が別の鳥に捕獲されたことに気が付いた。なんてことだ。森を出たからだ。 私は必死に体をくねらせた。するとふと爪が離れた。猛烈な速さで地面が迫る。落下しているのだ。背中に意識を集中させるも落下は止まらない。 せせらぎの音。冷やかな気持ちのいい冷気。 目を覚ますと岩の上にいた。喉が渇いた。     
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