ある苦悩

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首を伸ばして岩下覗く。水だ。頭をふって気を覚まし、水を飲もうと水面に顔を近づける。と、水中から蜥蜴が顔を出した。ぱっと顔を引っ込める。危なかった。 場所を変えて岩間に溜まった水を飲む。体が生き返るようだ。もう少し飲もう。体を乗り出して水の中へ入っていく。手首まで水に付けて。 はっと、体を引いた。また水中の蜥蜴と目が合ったのだ。 水深は浅い。 はて。 もう一度、顔を水に近づける。 世界がぐるっと回転した。 私だ。 蜥蜴の私がいた。 木の根元に蹲って、もう何日も過ごしている。こんなことがあるだろうか。蹲りながらずっと、自分の浅はかさと馬鹿さを罵った。 そしてある日ふいに、何の考えも無しに木へ登った。不意に目の前に来た虫を食べ、向かいの枝に飛んだ。 私は私だった。鳥と思っていた時と微塵も変わらない。 世界は既に存在していて、私は既に存在していた。すべては既にあったのだ。 まずは、彼女を探さなくては。
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