廃墟にて

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 随分とボロボロになった革靴で、壁の残骸と思われる破片を蹴飛ばした。月明かりが煌々と照らす今は、ライターやらなんやらが無くても充分足元が把握出来る。 脚を一歩進めるたびに、先日に刺された腹部の傷跡が悲鳴を発する。常に痛覚が付き纏うのは煩わしいが、刺客を使用するほど俺の存在に怯えてくれているなら寧ろ好機であると言えよう。  止まるわけにいかない。  長年追い続けた犯人を逃すわけにいかないのだ。  肩で息をしながらも、声を張る。 「アンタ、いい加減に出てきてくれねぇかねぇ。かくれんぼが好きなら見つけてやるよ」  返事は無い。動く気配も感じられない。まだ階段は続いているため、更に上のフロアへ移動することも可能だ。  しかし、直感で反応する。  確実にここに「いる」と。
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