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「……シューイチ」
まさかの名前呼び!
いくらフランクにとは言ってもそこは『村田』でいいのでは?
「違う。よく間違えられるけど『ヒデカズ』だ。周りのやつは大抵『ヒデ』と呼んでくるから、良かったらそれで」
「分かった『ヒデ』だな。私のことは『タケル』で」
まったくもう。
建先輩の人懐っこさはよく存じているが、病院でもこんな風に生き生きと楽しそうにしておられるとは。
建先輩が元気なのを見られて嬉しいが、ちょっと遠くに感じて寂しいような。
リハビリが始まってからも建先輩のお喋りは続く。
「ところでヒデ。好きな人はいるのか?」
ガンガラガッシャン!
実習生が近くに置いてあった器具やらなんやらをひっくり返してしまったようだ。
「なっ、なんでそんなこと……」
あわてて器具を拾い集めている姿が挙動不審である。
「いやなんとなく。もしかして同じ大学にいるとか?」
バサバサバサバサ!
今度はファイルに挟めてあった書類を派手にぶちまけたようだ。
かなり広範囲に散らばったようで、私も拾い集めるのを手伝う。
「建殿!真面目にリハビリに取り組んでください。村田先生をからかってはいけませんよ」
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