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覚醒
「カムラ!」
(先程話したであろう。もう、カムラではない)
(……除霊できたのか?)
(いや、物質界での姿に戻っただけだ)
(どういうことだ?)
(さっきまでのそやつは、憑代を媒介として地獄での悪魔本来の姿を物質界に発現させていたのだ。……真の力を使うために変身していたと思えばよい。しかし、変身は魔力を消耗する上、憑代への負担が大きい。我らの攻撃によって変身が解けたのだろうな。おそらく気を失っているだけだ)
(……そうか)
(我も魔力はほぼ尽きた。……すまんが……寝る)
左腕の盾が片刃の剣に変化した後、アヌースの気配が俺の奥に沈んでいくのを感じた。
残りのアンデッドはこの剣と独力で切り抜けろ、ということか。
周囲を見渡す。
電気系統が破壊されたのか、停電したフロアにはわずかにしか外光が入って来ず薄暗い。
突然の主人の意識消失を受けてか、それともアヌースが発した凄まじい光を恐れてか、まだフロアに残っているアンデッドどもは俺を遠巻きにノロノロとうろついている。
咳き込む音が聞こえた。
いつの間にか黒い球体は消え、兄ちゃんが床に横たわっている。
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