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私は今、ある恐怖に襲われている。 恐怖と直線的な定義をするのは間違いかもしれないが わずかばかりの知恵の会議によって 対象は『恐怖』と固めることにした。 この恐怖とやらは不可視にして不可解だ。 私は現状況を『襲われている』と明言した。 だが、 細かく推理していくとそうではないように見える。 一先ずはこの現状況を説明することで確認しよう。 私自身は何処も変わりしない人間だ。 四肢、脳、頭、顔。 心臓、肝臓、腎臓、肺。 欠けている部分などない、普通な人間なのだ。 そして、その全ての部分に対して 恐怖は攻撃をしている。 しかし奴に実体はなく、 実に自然で、風の様な攻撃だ。 今の私というと、 手先や足先は先ほどから極度に冷えて、 心臓は握りつぶされるように痛み、 脳にかかる痛みは滝のように降り注ぐ。 唯一まともなのはこの『意識』しかない。 もし 一瞬でもこの意識を手放そうとしたのなら、 それは哲学的、精神的な定義の中での『死』を 生物学という人間も含まれるはずの規範から外れて 容易く 1秒と読めない時間を間にして 烙印のように押し付けられるだろう。 どうにもこの状況、 襲われるなど前提にも無く。 既に『死』という判子1つで終わる。 憐れにも逃げることなど無いのだ。
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