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チョコかと思ったらチヨコだった。
西陽の刺す放課後の靴置き場。
僕はバレンタインデーに浮かれる学校から逃げるように帰宅しようとすると、校舎の玄関の僕の下駄箱に、可愛らしいラッピングの箱がちょんと置かれていた。
初め、僕は何かの間違いじゃないかと思った。
箱には宛名も書いていなかったし、送り主の名前も書かれていなかったからだ。
クラスメートの男子のイタズラの可能性もある。
僕は瞬時に思考を多岐に渡らせると、極めて平静を装いながら、さっとその箱を鞄の中にしまった。
スキップしたい衝動をなんとか抑えながら帰り道を歩いていたが、愛すべき我が家が目に入ると、もう愉悦的興奮が抑えきれなくなってピョンピョンしながら門扉をくぐった。
「チョ~コ、チョ~コ、バレンタインのチョ~コ」
我ながら頭の中がお花畑な発言をして部屋に入ると、着替えもせずにどかりと椅子に腰掛けた。
すかさず鞄の中から先程の箱を取り出し、危険物を扱うような手つきで、そっと、箱を机の上に置いた。
誰が僕にチョコをくれたのだろう?
もちろん期待しすぎは良くない。
まだこの箱は男子のイタズラの可能性があるのだ。
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