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28歳 夢追うフリーター
「もしかすると僕の夢はもう叶ってるのかもしれません」
店長よりも長くこのコンビニに勤務する彼はアイスの品出しをしながら言った。
「子供の頃、主人公になりたかったんですよ。題材は何でもいいけど、やっぱり青春映画かな。がむしゃらに、なりたい自分に向かって走ってる感じの。それで俳優になろうと上京して、バイトしながらレッスン通って、オーディション受けたりして」
端役すら引っ掛からないんですけどね、と苦笑しながらコーヒードリッパーに豆を補充する。
「生活は苦しいし、睡眠不足だし、友達いないしで大変ですよ。……でもなんか、楽しいんですよね。生きてるって感じで」
レジに客が並び始めたのを見て、すいません戻ります、といった後にこう続けた。
「夢を追い続けるのが僕の夢なのかもしれません。でも、だとしたら、できれば死ぬまで叶わないでほしいかな」
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