17歳 本の虫高校生

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17歳 本の虫高校生

「私の彼、変なんです」  手元の文庫本から目を離さずに、彼女はそう言った。 「私、前に言ったんです。私には裏があるの、でもあなたには絶対見せないから、って」  そしたら何て言ったと思います、と問いを投げつつページを捲る。 「『角』だねって」  その答えを思い出してなのか、ちょうど物語がそのような局面だったのか、彼女は少し口角を持ち上げた。 「オセロの『角』だねって、そう言ったの。裏があることがわかってるのに、絶対にひっくり返せない。今度から君のこと『かどっこ』って呼んでいい?って。もちろんそれは丁重に断りましたけどね。想い人からそんな風に呼ばれたら、下手すると二度とオセロのできない体にされるレベルのトラウマになる危険性がありますから」  青い花が一輪刺繍されているブックカバーを纏った文庫本は順調に物語が進んでいく。 「変でしょ。どういう思考回路してるんだろう。でもそこがいいんです。同じことを他の誰に言っても、そんな答えはくれないじゃないですか。あとあんなネーミングセンスも持ってないだろうし」  そして彼女は、木目調の栞をページに挟んで、初めて目線を上げた。 「初めて裏を見せたくない人ができたの。誰にも、あなたにも、絶対渡さないから」
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