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夫が猫になったのは
夫が猫の姿になったのは、死んでからのことだ。
初七日が過ぎた頃、
「いやあ、うっかり死んでしまってさ」
と言うような顔をしながら戻ってきて、店のカウンターの上に座ったのだ。
「戻る気があるんなら、どうして死んだのよ」
と妻が言うと、彼は眉間に皺を寄せて、
「そう言われてもなあ」
といった調子でニューと鳴いた。
だが、彼もずっと猫の姿でいるわけではない。
風のない明るい月夜などは、十二、三歳くらいの美少年になる。
そうして庭に穴を掘っていたりもする。
穴からは青い壺などが見つかることもあり、蓋を取るとダイダラボッチがぬっと出てきて南へ歩き去った、そんなこともあった。
去年の十一月の末のことだ。
彼らの店は寒いから、彼らはしばしば二階の寝室に行き、布団の中で抱き合う。
日なたの匂いのする彼の毛皮に彼女は鼻を埋めるけれど、死霊である彼が暖まることはない。
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