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パイン村のあるモルゾオ国は、近隣の三国ハチノクロスタード、マスルメニア、コップリノと非常に平和的な国交を結んでいる。それはこのパイン村が常日頃からゲルタスク川の神ゲルタに国の繁栄を祈っているからだ。
同様にハチノクロスタードはハチン川、マスルメニアはドグズ川、コップリノはサイ・スロスイス川の神に祈りを捧げているため、この四つの川がある限り平和は保たれる。
ハルはまったく勝手な感情によってこの四つの川のうち一つのゲルタスク川の神ゲルタに村の滅亡を願ったが、この愚かで向こう見ずな行為をゲルタ神は一切相手にしなかった。
それよりもゲルタスク川の清流に汚れた頭髪を流す不埒者のほうがよっぽど神経に触った。この不埒者の名をロペという。
ロペは2年の調査結果をある一人にしかわからない方法で川を流れる頭髪に記した。
ハルが川を流れる不自然な頭髪に気付いたのは四日後で、その暗号を理解するのにさらに六日かかり、十一日目の夜に、ではいままで兄の便りだと思っていた各所に埋められた頭髪は他人のものだと理解して、大切に保管していたそれをすべて川に流した。
ハルの兄ロペによれば、四つの国の四つの川は、全て繋がっていて、実は一つの川なのだそうだ。そんなことがもし事実で、このモルゾオ国を含む四国に知れ渡れば、とんでもないことになる。とハルは思った。
間違いなく各国が「一つの川」の所有権を主張するだろう。一つの川の唯一神の名の下に。
この最終戦争は、ハルが川に流した悪戯ものの髪の毛たちが、ハチノクロスタード、マスルメニア、コップリノで発見されるのが引き金になることになっている。
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