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永遠の命が手に入らないものならば、せめて生きた証だけでも残そうと思うようになった。
そういった思考を抱いてからは時間が過ぎるのが早かった。
弓を引き、勉強をして、歌を歌って本を読んだ。
何か一つでも自分に為すことができるのなら、なんでもいいと思いながら様々なことに手をつけた。
結果、平均寿命の3割を迎えようかという今、俺は何一つとして成せずにいる。
そしてようやく気がついた。
僕には何かを為すような才能はなかったのだと。
けど、気づいたところでもう遅い。
今から何かをなそうとするなれば、これまでの人生で成せなかったのだからこれまで以上の時間を費やさなければならない。
ましてや才能が無いのだからなおさらだ。
結局、俺が何かを為すことができるのは早くても死の直前ということになる。
僕自身はその恩恵にあやかれない。
僕自身はその光を見ることすら叶わない。
だったら、これまでの人生はなんだったのだろうか。
生きた意味などなかったでは無いか。
なら、なぜ死ぬのが怖いと思っているのだろうか。
もう、考えれば考えるほど、何もわからなくなっていった。
自分は僕なのか俺なのか誰なのか。
そうして理解できない自分を理解しようと思考に思考を重ねた僕はふと気がついた。
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