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老婆と同じホルスターに吊られた44マグナム。
それで東は、さっき老婆がしたことと同じことを大下に向かって行った。
当然大下は、さっきのオヤジと同じように倒れることになった。
東は、しかし何か自分が自分にしかできない、やりがいのある仕事をしたようには、今日は感じなかった。
自分はあの婆さんと同じことを、同じ要領でやっただけだった。
これが俺が本当にやりたかった仕事なのか?
今日に限って東は、入社3年目でお茶くみとコピー取りばかりやっているOLと同じことを思った。
もっとやりがいのある仕事を求めて、就職情報誌でも読んでみようか、と東は思った。
東は、その足でアパートメントを離れた。
3発のマグナム弾を叩き込まれて、大下が完全に死んでいる事は分かっていた。
こんな外道に何の同情もない。
東は、さっきまで張り込んでいた安ホテルの自室に戻ると、つけっぱなしになっているテレビを見た。
「笑点」は、大喜利の時間になっていた。
林家木久蔵(現・林家木久扇)が、歌丸の悪口をネタにして、今ちょうど座布団を全部持っていかれているところだった。
落語家にしては関西系の粘りのあるボケをかます落語家の息子・木久蔵、今の東には、そんな印象しかない。
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