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 中学校を卒業して高校に入学するまでの、つかの間の休日を僕はどこに行くでもなく、両親の仕事を手伝いながらのんびりと過ごしていた。  僕の家の農園には、すっかりボロボロになってしまった、ヴァレリアと作った秘密基地の跡が残っていた。僕の父親が廃材を使って作ってくれたプレイハウスは、今になって改めて見てみると、とても小さくて、よくこの中に2人も入って遊べたものだと思わせた。  「もうここじゃ遊べないね。」  聞きなれた声にびっくりして振り返ると、ヴァレリアがいた。  「ごめん、私……戻ってきちゃった。」   話によるとヴァレリアはこの国の中心地にある中学校に転校していたのだそうだ。  この国の、そして地球規模の寒冷化が起こってからこの国にやってきた人の中でも比較的裕福な層が住む地域にある中学校だったから、外国人に対する差別も比較的穏やかだろうと、ヴァレリアの両親が考えてのことだった。  だが、ヴァレリアに対するクラスメイトの扱いは、ここの中学校にいた時より、はるかに酷いものだったらしい。  ヴァレリア曰く、ヴァレリアが転校した中学校では、この国の国籍を持つ生徒と、外国籍を持つ生徒の間で、完全に壁が出来てしまっていたようだ。双方がグループを作って、お互いに差別意識をまき散らしていたから、対立はしていたものの、見かけ上は勢力が均衡して平穏な状況になっていた。  先生も、そのことを知ってはいたが、迂闊にどちらかの肩を持つことで、よけいな騒ぎを引き起こすことを嫌って放置していたようだ。  そんなところに放り込まれたのだから、ヴァレリアにとっては、たまったものではなかっただろう。  外国籍を持つクラスメイトの中には、ヴァレリアのような白い肌をした生徒が数多くいたが、この国の人間であるヴァレリアが、一緒になってこの国を見下すような発言を出来るわけがない。だからといって、この国の国籍を持つ生徒がヴァレリアの味方になってくれるわけもなく、ヴァレリアは孤立するほかなかったらしい。
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