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「おやおや、久しぶりだねぇ。」
背後で声がしたことにびっくりして振り返ると、そこには近所に住むボビー爺さんの姿があった。
「しばらく見なかったけど、帰って来たのかい?」
ボビー爺さんがそう言うと、ヴァレリアは大声を上げたところを見られたのが恥ずかしかったのか、顔を赤くして頷いた。すると、ボビー爺さんはその空気を察したのか、笑いながらこう言った。
「仲が良くて羨ましい。夫婦喧嘩は犬も食わないと言うからのう。」
そう言い残すと、ボビー爺さんは還暦を優に超えた年齢を感じさせない足取りで去っていった。
ヴァレリアと僕は、幼い頃しょっちゅう大声で口喧嘩をしていたものだった。だから、それを見てきたボビー爺さんは、少々ヴァレリアの口調が荒れたところで何とも思わなかったのだろう。
会話が中断させられたことで少し頭も冷え、結局どういうことだったのか、なんとなくわかった。おそらくはビアンカとその取り巻きが、ヴァレリアと僕を引き離そうとしていたということなのだろう。
もちろん根本的な問題はそこではない。
そのことに気がついた僕たちは、どちらからということもなく、お互いの気持ちを確認して、晴れて恋人同士となったのだった。
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